マネージャーが成長するためのマネジメントに挑戦する
管理職に就いた際にはマネジメントスキルをより質の高いものにしようと意識しなければなりません。
そのためにはマネージャー自身が成長する方法を学び、それを実践することが大切です。
マネージャーとしての成長に結びつく自身のマネジメント方法を紹介しましょう。
まずあなたが、「マネージャーが成長するためのマネジメント方法があるけど挑戦してみない?」と言われたとします。
その時心に思い浮かぶのは次のどちらに近いでしょうか。
1.Can I do it? (自分にできるだろうか?)
2.How can I do it?(どうやったらできるだろうか?)
それぞれの答えについてどのようなことがわかるのでしょうか。
『Can I do it?』タイプの人
このタイプの人は、何か新しいタスク与えられたときに自分ができるかどうかを考えてしまう人です。
少しでも難しそうだと感じたとき、積極的に取り組もうとしません。
どちらかと言えば挑戦する前に自然と心にブレーキをかけてしまう人です。
『How can I do it?』タイプの人
このタイプの人はどうやったら実施できるかを積極的に考えられる人です。
実現が難しそうなタスクでも視野を広げ、幅広い選択肢の中から方法を探ることができる人です。
「こうやれば実行できるかもしれない」「あの人の助けを借りれば、実現できるかもしれない」と考えます。
新しい仕事や取り組みにも積極的に挑戦していくうちに仕事を楽しめる人です。
ここまでのまとめ
Can I do it?の考え方は、自分の過去の体験から生まれる考え方で、自分の知っている世界のことしかできないという考え方。
一方How can I do it?の考え方は、自分がまだ経験していない未知の領域に積極的に踏み込んでいく考え方です。
How can I do it?のスタンスに立つことで、マネージャーを成長させる取り組みに挑戦することができるのです。
それでは「How can I do it?」のスタンスに立ったところで、具体的にマネージャーを成長させる取り組みについてみていきましょう。
マネージャーの成長を促す「4つの軸」とは
ではマネージャーが成長するための具体的なポイントについて述べていきます。
先ほどの「How can I do it?」の答えにあたる部分です。
それは、【4軸の目標管理】と言われるマネージャー自身のマネジメントです。
それでは4つの軸とは何かを以下の表で見てみましょう。
4つの軸 | 視点 |
---|---|
1、船長の役割 | 目標達成志向、イニシアチブ、指揮命令、リーダーシップなど |
2、設計者の役割 | 分析的思考、システム思考、概念的思考など |
3、指揮者の役割 | チームワーク、人の育成(長所を伸ばす)、全体のパワー指揮など |
4、教師の役割 | 人材育成(指導・教育)、情報探求など |
マネージャーとして身に付けたい能力、スキル、知識などの項目は非常に多いです。
よって、自分が必要としている項目や自分に不足している項目を確認することは簡単ではありません。
そこでマネージャーとして必要な項目を4つの軸として整理しました。
そしてどの軸を重視すべきで、どこを軽視してしまっているかを各々の軸の視点から見つけていこうというわけです。
それでは各軸について考えていきましょう。
船長の役割と言う軸
船長というのは以下のような役割があります。某海賊王をイメージするといいかもしれません。
- 目的地を目指す
- 絶えず最適の判断を行う
- 乗組員に正しい方向性を示す
- 先頭に立ってリードしていく
こういった役割を果たし、船の運行や安全管理などの最終的な責任を負うと言う役割を担います。
マネージャー自身が船長なった気分で職場や部下を見たとき
- 目標を達成しようと言う目的達成の志向性
- 自分がマネージャーとしてチームの主導権を取ること
- 指揮や命令を出しリーダーシップを発揮すること
などといった項目を意識することができるでしょう。
この視点で自分自身の成長の素材が見えてくるはずです。
船の建造などの設計者の役割と言う軸
次は船の設計者になったと想像してみましょう。
船の設計者に求められることは何でしょうか。最終的に船を完成させるには何を意識するのでしょうか。
- どんな船にするか構想まとめ、図面など具体的に作製すること
- 使用する部材や部品を指定し、航海に耐えうる船を設計すること
すなわち設計者は部材や部品に関する専門知識を有してなければなりません。
そしてその品質やコスト等を含めた全体の分析によって最良の船を開発するという役割を担います。
では船長の例をマネージャーに落とし込んで求められることを考えてみましょう。
- 目標を達成するために解決しなければならない事柄を調査し分析すること
- 目標達成に必要なチームの編成や工程管理・コスト管理、部下の担当や役割表の作成といったシステム思考
こうしたことに目を向けることで自分自身の伸びしを発見することができます。
オーケストラの指揮者の役割と言う軸
オーケストラの指揮者は、自分が指揮するオーケストラと言うチームを率いていかなければなりません。
個々の楽団員それぞれの長所を伸ばすとともに、弱みを消して楽団全体のパワーやエネルギーを最大限に発揮させることが求められます。
そのため、指揮者は楽団と言うチームのメンバーのモチベーションを高めたり、コミニケーションを図ったりする役割を担います。
自分自身も指揮者と言う役割に置き換えたとき、マネージャーとして部下を取りまとめてチームワークを発揮させることが重要になってきます。
- それぞれ部下の長所を引き出し、チーム全体のバランスを考え部下の能力を発揮させる。
- チーム全体のパワーを最大限に発揮させるための工夫
教師の役割と言う軸
教師は教科を生徒にわかりやすく説明したり、教育や指導を通して生徒を育成すると言う役割を担います。
マネージャーに置き換えると、
- どうやって部下を教育し成長させていくかの指導方法
- 部下を育成させるためのアイテムに関する情報探求
それらを考えることで自分に足りない要素を見出していきます。
ここまでのまとめ
マネージャーは以上の4つの軸を通して何が見えてくるのでしょうか。
それはマネージャー自身が成長するための素材です。
この4つの軸(役割)を意識することで「マネージャー自身が成長する意欲」「自分自身に対する挑戦」「部下に自己開示し評価を求める行動」「自己の成長に向けた真摯な取り組み」などといった成長課題が見えてきます。
「マネージャーの4軸」を用いた目標管理の進め方
部下を巻き込んで自身の現状把握と今後の計画を共有する段階
まず先ほど述べた4つ軸「船長」「設計者」「指揮者」「教師」それぞれについて現時点の自己評価をします。
評価は、5段階でも10段階でも自分で段階を決めます。
達成レベルの評価は数値化が難しいので、厳密な基準を定める必要はありません。
この次が重要なポイントになります。
マネージャーはこの自己評価を部下に提示し、今後目指す具体的な計画を説明します。
部下への説明が終わった後に自己評価や目指す方向性について、部下からの質問やコメントを求めます。
このとき、マネージャーの自己評価と部下からの評価に差が発生したときは、お互いにその差の理由を話し合いましょう。
- 自己評価
- メンバーによる評価
- マネージャーとメンバーが合意する評価
部下とともにこの順で自身の目標管理することを目指しましょう。
このようにマネージャー自身が部下に自己開示することで部下とのコミニケーションが深まります。
さらに自分自身気がついていなかった性格や習慣を客観的に把握できると言うメリットもあるでしょう。
計画の実施段階
前項でまとめた自身の計画を実際に実施していきます。
この4軸を意識して仕事を進めていくことで、今まで気づかなかったマネージャーとしての自分の長所や短所に気づくことができます。
「自分は船長の役割として目的達成の思考が強かった。しかしオーケストラの指揮者の役割、つまり部下の力量に応じてチーム全体のパワーアップを図ることが弱い」
「船の設計者としてのシステム的思考は得意であるが、部下を育成すると言う教師の役割はもう少し努力しないといけない」
こうした新しい視点で見えてくる教訓から自ら取り組むべき新しい活動を模索します。
また自分を取り巻く状況を多方面から冷静に分析することが可能となり、状況に応じた対応力も生まれてきます。
さらに、部下はマネージャーの目標が示され、マネージャーの変化に注目し期待するようになってきます。
マネージャー自身も、部下に公表した責任と自覚を持って4軸の目標管理に取り組むことが求められます。
マネージャーがこれらの活動を進める際には、自身の活動を客観的に評価しコントロールする【メタ認知】という考え方を応用できます。
自分をコントロールするメタ認知とは
「メタ認知」とはアメリカの心理学者ジョン・H・フラベルが初めて使用した言葉です。
彼はこの言葉を次のように定義しています。
「自分が行っている認知活動を対象として、その認知活動を自分自身がモニタリングし客観的に評価した上で自分の活動をコントロールすること」
難しくてなんだこれはとなりますね。
簡単に言うと自分を見つめるもう1人の自分がいると言う意味で「認知の認知」とも言うそう…。
メタ認知能力の高い人は、自分を第三者的に見ることができる人。すなわち客観的な自己診断やモニタリングができる人です。
詳しく知りたい方は以下の本をお勧めします。
評価・改善の段階
自己評価や計画を部下に発表してから半年程度の期間が経過した時点で4軸の目標管理の到達度について評価を行います。
まずマネージャー自身による自己評価を示します。
なぜその評価に至ったのかという理由を部下に説明します。
マネージャーとして部下からの意見を積極的に求めることは重要です。
部下に計画について説明した時と同様に、評価内容について部下と意見交換をしましょう。
マネージャーとして今後の取り組みについて、さらに改善点などがあれば今後の取り組みに反映させていきます。
まとめ
マネージャーは以上で述べた「船長」「設計者」「指揮者」「教師」の4つの軸を意識します。
その4つの軸をもと自己評価をし、部下とともに今後自身がどんなマネージャーになるのかの計画を立てます。
そしてその計画を実行し1サイクル半年を目安に評価を行うことでマネージャーとしての成長につなげるということでした。